横須賀の書道教室 ちいろば書道会

名品紹介「唐太宗 温泉銘」

唐太宗唐 太宗
李世民(り・せいみん)
598〜649年
唐の太宗は、中国の書道文化を為政者として熱心に隆盛に導いた皇帝として、清の乾隆帝や康煕帝などと共に際立った存在です。唐朝の建国からその基盤となる時期を治め、貞観の治と呼ばれるました。書道熱は尋常ではなく、王羲之への傾倒は、国を傾けはしなかったのかと心配する程の熱の入れようで、彼の王羲之への執着が、王羲之を現在も「書聖」と呼ばれる所以ともいえそうです。有名な逸話では、王羲之生涯の名作と誉れ高い「蘭亭序」の真筆を入手する経緯や、その蘭亭序を自身の陵墓へ入れるよう遺言したことなどは非常に有名です。

さて、その皇帝太宗の残した書でもとりわけ名高いのが、この温泉銘です。古来よりその存在は知られていたものですが、20世紀初頭の西域探険により、敦煌の莫高窟から発見された拓本が唯一の真筆資料といわれています。この拓本は唐拓(とうたく・唐時代の拓本、現在残っている拓本としては最古のもの)本とされ、生き生きとした躍動的な書が精彩に拓されている名品です。大中国を治めた太宗皇帝の気宇雄大なさまが、そのまま感じられる書といえるでしょう。

唐代は六朝から隋時代を経て熟成されてきた楷書がより洗練され、いわゆる初唐の三大家(虞世南(ぐせいなん)、欧陽詢(おうようじゅん)、褚遂良(ちょすいりょう))らにより、ひとつの完成したスタイルが確立されました。一方、行書では褚遂良の「枯樹賦」(こじゅふ)などの高い筆法を駆使した名品があり、それと並び、太宗の書「晋祠銘」(しんしめい)そして「温泉銘」(おんせんめい)が、特に後世でも高く評価されている名品です。
土抱記

「温泉銘」揮毫映像

岡崎創歩出演
DVD付書籍『臨書ー書の古典を学ぶー』天来書院刊


『臨書ー書の古典を学ぶー』
臨書 発行:天来書院
出演:内田藍亭、岡崎創歩、小林翠径、高市乾外、
高橋蒼玄、高橋蒼石、吉田菁風、渡部半溟